聞き屋

慌ただしい一日の終わり。

つかの間、おだやかに時間が流れる夜更け。

ベッドへ向かおうとした僕をスマホが呼び止めた。

映し出されたナンバーを見て、すぐに彼女だとわかる。

今日のご機嫌はどうだろうか。


挨拶もなく、話しはじめた彼女の声は、

お世辞にも明るいとは言えない。

あぁ、今夜も長電話になりそうだ。


僕は聞き屋。

人の悩みやグチを聞くのが仕事だ。

解決策なんて示さない。

アドバイスをすることもない。

だって、僕はカウンセラーなどではなく、

あくまでも、聞くだけ。

それでも商売が成り立つんだから、

世の中っていうのは不思議なものだ。


今夜、電話をかけてきた彼女も常連客のひとり。

彼の態度が冷たいからと、浮気を疑っているらしい。

彼の行動すべてを悪い方へ、悪い方へ

と解釈してしまう彼女の話を僕はじっと聞いている。

心の中もモヤモヤを、すべて吐き出してしまうまで。

僕は、彼女の話を聞き続ける。

どんなに長くても、たとえ朝が来ようとも、

彼女の話にとことん付き合う。

だってそれが、僕の仕事なんだから。


キミも話がしたくなったら、いつでも連絡しておいで。

気が済むまで、ずっと

キミの話を聞いてあげるから。






朗読/蒔苗勇亮

ストーリー/いとうかよこ

© 2018 by Night Cap Story.

Proudly created with Wix.com