恋する交差点

信号クンはクールなヤツだ。

いつも颯爽と、堂々と、迷わず前へ進んでいく。

迷ったり、立ち止まったりなんてしない。

きっと彼は、前に進むことしか考えてないに違いない。


そんな信号くんが、

あの日はまるで別人のようだった。

顔を真っ赤に染めあげて、立ち止まったまま、

その場から一歩も動こうとしないんだから。


真っ赤な顔の信号クン。

その視線の先を追いかければ、

笑顔の素敵な女性がいた。


やがて、彼女は通りを渡り、

信号クンに近づいてくる。

けれどやっぱり、信号クンは何もできず、

ただ、赤い顔のまま立ち尽くしている。

そして、通り過ぎていく彼女の気配を感じながら、

信号クンはずっと赤いままだった。


あれから、信号クンを見かけるたび、

自然に笑みがこぼれてしまう。

信号クンは相変わらずクールで、

颯爽と、堂々と、ためらいもなく前へと進む。

けれど時々、

真っ赤に染まって立ち止まることがあるんだ。

そんな時はいつも、通りの向こうに彼女がいる。


そう、信号クンは、恋ってヤツを覚えたらしい。







朗読/蒔苗勇亮

ストーリー/いとうかよこ

© 2018 by Night Cap Story.

Proudly created with Wix.com